このシリーズも3回目ですか。。。
狩猟ブームと言われている今、より多くの人が狩猟を始めようとしていることはとても良いことだと思いますし、どんどん増えてほしいですね。
狩猟を行うようになれば、自ずと
環境に関心を持ち、環境保全を意識するようになると思っているからです。
しかし、狩猟を始める人の中には、いろいろ失敗をやらかす人も出てくるはずです。
深夜の公園でハクビシンを捌いて警察に連行される人や、これまた
深夜に毛皮なめしを集合住宅の敷地でやって通報される人など。
狩猟スキルを高めたい一心でやっているというのはわかるのですが、結果的に人様に迷惑をかけてしまった。なんてことが起こると予想されます。
『俺と同じ轍を踏むな!』その① 深夜の公園でハクビシンを捌いて警察に連行された話『俺と同じ轍を踏むな!』その② 深夜の駐車場でせっせと毛皮なめししてたら通報された話”人の振り見て我が振り直せ”とおこがましいことを言いたいわけではないのですが、他人の失敗談を知って、同じ轍を踏まないようにしたいですね。
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狩猟スキル。
それは銃や罠などで、獲物を狩ることだけの技術ではないと思っている。
狩猟に出かける前の準備から、猟場で獲物を仕留め、血の一滴までも無駄にせず、美味しく食べる。
このように、
“動物の命を己の血肉に変えるまでの全工程”だと私は考えている。
必要に応じて、猟場で幕営したり、焚き火をし、沢の水を濾過して飲むこともあるだろう。
それら、
アウトドア・サバイバルスキル全般も狩猟スキルに含まれると思う。
また、山を練り歩き、獲物を運搬する体力も必要だ。
これら狩猟スキルというものは、当然ながら一朝一夕で得られるものではない。
絶え間ない努力があってこそ身につくものだ。
私は学生時代は
サッカー部だった。
社会人になってからは、テントと食糧を詰めた重い荷物を背負って登山をするようになった。
体力とアウトドア・サバイバルスキルについては、それなりの自信がある。
しかし、
動物を肉にして食べるということは経験がない。
現代社会においては、多くの人がそうであろう。
魚であれば、三枚おろしに挑戦したことや、キャンプした際に釣りあげた魚を捌いて食べたことはあったが、魚に申し訳ないと謝るほどの捌き具合だった。
今の状態では、獲物を仕留めることができても肉を無駄にすることになってしまう。
止め刺しから解体までを練習するにはどうすればよいだろうか?
まさか
屠畜場で働くわけにもいかんし・・・
あ!そういえば、「
ぼくは猟師になった」で、養鶏場から卵を産まなくなったニワトリをもらってきて食べた話があったな。
私を狩猟の世界へと導いた一冊の本、
千松信也著の「ぼくは猟師になった」で、そんな一節があったのを思い出した。
調べると、採卵用のニワトリで、卵の生産性が落ちた生後約1年の個体を「廃鶏(はいけい)」と呼ぶそうで、それはら食肉加工業者がわずか10円程度といったタダ同然の価格で買い取って行くという。
技術習得のためだ。 売っていただけるのなら1羽1,000円でも安いだろう。
私は付近の
養鶏農家を交渉して回ることにした。
そして───
いただくことができました。 廃鶏さん。

いただいたのは2羽。卵を産まなくなったニワトリなので、当然性別はメスです。
箱が狭くて窮屈だったよね。糞まで漏れちゃってて・・・ゴメン。
採卵用および肉専用の
ブロイラーもそうですが、生涯を身動きが取れないほど狭いゲージの中で過ごすそうです。
歩くことがないため、足が退化し、地面に置いても歩けないし、慣れない動作をすると骨折するニワトリもいるのだとか。
そして、クチバシで突きあってケガをしないように、先端を切り取ってしまうらしい。
今の今までそんなことは露知らず、鶏肉大好きで何も考えず食べまくってきた輩が言えることではないのだが、あまりにも不憫だ。
可哀想すぎるだろ、こんなの。国の文化によっては、“出された料理を残すこと”が礼儀とされているところがあるそうだから、一概に食べ物を残すことを否定できないかもしれない。
だが、知らない人は
一度どういう過程でニワトリが、卵が、スーパーに陳列されているかを見るべきだ。
肉や卵を粗末にすることが。
これから命を頂戴するこのニワトリさん。わずかな時間だが、外の世界を見せてやりたい。
そう思って、箱から出して、そっと地面に置いた。

このニワトリさんの顔、目、よく見てください。
拡大してよく見てください。初めて外の世界に出たのです。
今までかいだことのない匂いや聞いたことない音を感じて、放心状態。
肛門が緩んでしまったのか、
脱糞ブシャァァーとぶちまけましたが、尚も放心状態です。

恐る恐る、大地を歩き始めるニワトリさん。
地面の感触はどうだい? 身体に当たるそよ風が心地良いだろう?

もう1羽も箱から出して歩かせる。
少しの時間だけだけど、
「生きている」ということを感じてほしい。
わかっているさ、
こんなことは偽善だってこと。
だがな、俺はこの、狩猟スキルを向上させるための、言い方悪いが「練習台」となってくれるニワトリさんに、敬意を払いたいんだよ。
一瞬でいい。生きた証を胸に刻んでほしいのだ。
そんなことを思って哀愁に浸っていると、背後から
『あ~ニワトリだーー!』と幼女の声がした。隣の集合住宅の幼稚園児だった。
すると大きな声に驚いたニワトリが、
『コケーッ!!』と鳴いて全速力で逃げ出すではないか。
は、早いっっっ!!?ニワトリ1羽は私と幼女の間をすり抜けていくと、駐車場の車の下に逃げ込んだ。
その速さ、
瞬身の術(※1)かのごとく。
もう一羽は茂みに身を潜めたので、近づいて掴もうとした。
すると、
『コケーーーッココ!!』と翼を広げ羽ばたき、瞬時に私の背後に回るではないか。
こ、これは、
「飛雷神の術」ッ!?(※2)
※12 漫画「NARUTO-ナルト-」で出てくる技一体・・・どこの
頓珍漢だ!!ゲージ飼いのニワトリは歩けないなど言ったやつは。
この俺の背後を取るほどの鶏だぞ? だたの鶏じゃない!!
だがな、俺とて若い時分には、俊足を買われて上級生を差し置きサッカーの試合に出て名を馳せている。
スピード勝負においては、負ける気がしねぇ。
『うおぉぉぉぉぉぉ!!』『コケーーーーーッ!!!』15分後。
どうにかニワトリを捕まえることができまして、無事に箱に戻すことができた。
あ、幼女はというと、無責任にも捕獲に助太刀することなく去っていった。
しかし、ニワトリ捕獲作戦で体力を激しく消耗してしまい、腹も減った。
解体するのは午後にして、この日、一緒にニワトリ解体を行う知人と妻と3人でお昼に出かけることにした。
で、その間ニワトリだが、箱に入れたままではニワトリがもがいて箱が倒れて、再び脱走されるかもしれない。
なので、ゴミ捨て場のネットボックスの中に置くことにしました。

こういうやつ。
見たことありますよね。
住民が驚かないよう、
「●●号室のサラリーマン猟師です。 11:00~13:00くらいの間、こちらにニワトリを置かせていただいております。 ご迷惑をおかけします。 携帯番号」
というように、張り紙をした。
これで、事件になることもなかろうと高を括って昼を食べに出かけたのだった。


食べに行ったのは、青梅にある「
繭蔵」(まゆぐら)。
大谷石の蔵を改装して作られたお店で、その外観から気になっていた店だった。

野菜が沢山入ったグリーンカレーはとても美味。

2階では定期的に個展も開かれているようで、この日は西多摩地方の獅子舞を題材にした写真展で、興味深いものだった。
暢気に昼を食べて帰ると、ニワトリ置き場の前で、アパートの住民である女性がネットボックスのニワトリを見ている。
こんにちは~っと声をかけると、、、
『これ、ニワトリが捨てられてたんです! 今、警察に通報したところです。一体誰がこんなこと・・・』どっわ~~~~~!やっちまったーーーーー!!!また通報かよーーー・・・あれ、張り紙はどこ行った??
見渡すと・・・風で飛んでる~~~!
いや、この日は風はなかった。 よく見ると、ニワトリがくくり付けてた部分を突いて破っていた。
さすが、動物。 予想外の行動をしやがる。
住民女性に陳謝し、現場に急行しているという警察にも電話して、駆けつけるのを辞めてもらいました。
いやーしかし、ゴミ捨てネットにニワトリを捨てると考えるもんですか。
確かに、突然自分の家のゴミ捨て場に生きたニワトリいたら驚きはしますが。
出かける前、妻からも
『こんなところにニワトリ置いて、本当に大丈夫?? やめた方がいいよ。』と注意されるも聞き入れず。
後で激しく叱責されたのは言うまでもありません。
反省&反省。
失態はありましたが、この日、無事にニワトリさんを捌くことができました。

羽を毟って産毛を焼いたら、焼きすぎてしまった。
その後も、ニワトリを売っていただいて捌いてと、解体技術を磨き、今では手早く、そして歩留まり良く、肉にすることができます。
何十羽と捌きましたが、必ず命を絶つ前に、逃げられて捕まえるのに困らない範囲で、しばらく歩かせるようにしています。
良いか悪いかはわかりません。いえ、むしろ人間の偽善行為です。
ほんの少しの間、ゲージの外の世界を見て、自由を感じてもらい、生きた証を得てもらいたいのです。
「廃鶏」というよろしくない呼ばれ方をするニワトリたちのおかげで、私は狩猟スキルを高めることができました。
廃鶏は肉は硬いですが、味があって美味しいです。良いスープも取れます。
心底感謝して、いただいています。 本当にありがとう、ニワトリさん。
あ、ちなみに、妻は僕が捌いたニワトリは絶対に食べません。
殺すなんて残酷。肉はスーパーで買えばいいじゃないとのことです。
我妻ながら理解のない人で呆れます。
こういう輩は、ニワトリのゲージに押し込んでやりたいですね。最後までお読みいただきありがとうございました。
あわせてこちらも読んでいただけると幸いです。
私たちが食べているニワトリについて書かれています。
にわとり残酷物語
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