アライグマと語り合ってみた話
- 2017/06/10
- 01:47

動物と会話ができたらどんなにいいだろう? と子供の頃によく思った。
イヌ、ネコ、文鳥、金魚、イグアナを飼ったことがある。
もしかしたら喋るようになるかも!と動物相手に会話を続けたメルヘンチックな少年時代だった。
愛読書は「シートン動物記」だったしね。
でも今は、動物の話がわかるイヤホンみたいな装置が発明されたとしても、使いたいとは思わないね。
狩猟やっているわけだけど、命乞いなんてされたら逃がしちゃいそうだもんな。
『痛い!』 『苦しい!』 なんて叫びも聞きたくないし。
あと、ペット飼ったとして、友達みたいに話ができたら楽しいのだろうけど、動物は気遣いやお世辞なんて言わないだろうから、
『あんたの屁、マジで臭いんだけど』
とか
『たまにはいいもん喰いてぇよ~。ま、お金ないの知ってるけどー』
なんてストレートに言われたら腹立ってケンカになるに決まってる。
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な~んてことを考えていたある猟期の罠の見回りで、アライグマがかかっていた。

不思議なもんだ。
動物と話をしたいとは思わない。 と、さっきまで考えていたのに、目の前にアライグマがいて、急に話をしたくなった。
多分、パッと見て話しかけやすそうな奴に思えたんだろうな。 人間にだっているじゃん、初見でも話しかけやすい奴って。
で、「いっちょアライグマと腹を割って話をしてみるかぁ」と、車からイスを出し、箱罠の前に腰かけて小一時間くらい一方的に語ることにした。
端からみたらヤベェ奴だし、自分でも何やってんだと思ったけども、森の中で人に見られるわけではないし、人間誰しも人には見せないヤベェ趣向の一面があるもんだと言い聞かせた。
俺 『やぁ! いい天気だな。狩猟日和。ちょっと話しようぜ』
アライグマ 『・・・。』
お、威嚇してこないし、そんな警戒もしてない感じだ。
コジュケイが、会話を邪魔するかのごとくチョットコイ!チョットコイ!と鳴いている。
あいつらは銃猟禁止区域を理解している小賢しい鳥なんだよ。とアライグマに教えてやった。
会話を続ける。
野生として生きるって大変だよなぁ。 でも、人間社会もしんどいぜ。
飯喰ってくためには働らかにゃならんわけだが、仕方なく嫌々やるのは心身共に疲れるもんだ。
職場の人とか取引先とかに気を使うしさ、満員電車での通勤とかね。本当、ストレス溜まるよ。
その点、君らはいいよな。山の中を自由に徘徊して、冬でも服を着なくていい身体をもってて、昆虫からカリントウまで喰らうグルメな食生だ。
アメリカ大陸からペットとして連れてこられて、それなのに無責任な飼い主によって山に捨てられて可哀想だと思うけどさ、実際アメリカより日本の方が過ごしやすいだろ?
だからたくさん増えたわけじゃないか? 気候も食べ物もアメリカより日本の方が合ってるのだろうさ。
それにさ、畑の作物を荒らしたり、希少な水性爬虫類を食らうからとかの理由で、人間にとっての有害動物とされている君達だが、今が耐え時だぞ。
そのうち人間の数がどんどん減ってくる。
里山ビジネスと称して猟だの林業だので、これからも山に人間は来るだろうが、里山周りの人間の衰退はもう始まっている。
既に地方だと、人間が敗北宣言を出して都市に移り、集落が消滅していっているというニュースもある。
栄枯盛衰ってきっとなんにでもあるんだろうよ。
人間が衰退したら、天敵のいない君達に栄華が訪れるかもしれん。
と、一方的に喋っているが、アライグマは木の棒をかじったり、くるくる回したりして話を聞いているようには思えん。
こっちも一人で喋っているだけだとつまらなく、眠くなってきた。
猟期に入ったってのに、今日はまたずいぶん暖かいな。
現代人、特に日本人は慢性睡眠不足なんだよ。
あー眠い。ちょっと寝るわ。30分くらい経ったら起こしてくれ。

と言って、マットを敷いてから横になったが、気温が下がってきたのか肌寒さを感じてすぐに目が覚めた。
時計を見ると、ちょうど30分寝ていたらしい。
あ、アライグマは───!?
アライグマも寝とる。
無防備な寝相だなおい。
前に獲ったアライグマで、イビキかきながら寝てて、棒で突っついても、箱揺らしてもなかなか起きなかった奴いたな。
おーい起きろ。そろそろ・・・時間なんだ。
目が覚めてキョトンとしているアライグマに言った。
いろいろ一方的に話をしたが、獲ってしまったからには、これから君を殺して肉にせねばならん。
俺が人間、君がアライグマとして生まれた以上の運命ってことでさ、申し訳ないんだけど割りきってくれ。
君に感謝して、君の肉を喰ってくれる奴らがいる。 だから・・・いい死にかただったと思ってくれよ。
毛皮も皮鞣しに凝ってる奴がいてさ。 そいつがティュシのカバーとかにしてくれるよ。
あ、そうそう、猟期が終わったら、仲間と供養祭ってのやるんだわ。狩猟で獲った獲物に感謝して供養するっていう飲み会。
そこで君のことも話題に出して、みんなで一緒に供養させてもらうよ。
仏教の世界だと輪廻天性って考え方があるらしいが、また次世でも会えるといいな。
次世じゃ君が人間で、俺がアライグマかもしれないな。俺が箱罠にかかって肉にされたりして(笑)
・・・。
じゃあ・・・そろそろ捌かせてもらうわ。
苦しませてすまんが、すぐに綺麗な肉にするからな!
今日は話ができて楽しかったよ。
次世で会おうぜ!!

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