宇宙一、美味い餅の話をさせてほしい
- 2021/04/25
- 23:24

この話の大半は祖父との思い出話になるかもしれない━━━
僕の祖父は何かにつけては、勉強しろ、本を読め!と言う人だった。
博多の叔父家族に年に何度か家族+父方祖父母で会いに行くのだが、その度に太宰府に行った。
当時は熊本市内に住んでいたので、大宰府までは高速使って2時間弱。
小学校低学年だった僕には、とても長く、退屈な旅だった。
大宰府に行く目的は、祖父が孫たちに学問の神様として崇め奉られている菅原道真公のよう勉強ができるようになってほしいというもので、道中で散々菅原道真公の話を聞かされたものだった。
大人になってから知ったのだが、僕の祖父は尼崎の商家の生まれで、次男だか三男だったか、とにかく跡取りではなかったので、沢山勉強してお役人になったそうだ。
勉強しなさい、本を読みなさいが口癖だった人なので、勉強さえしておけば不幸にはならないという考えをしていたんだなと思う。
恒例だった大宰府行き、長い高速道路、つまらない菅原道真公の話。
大宰府に行くのは嫌いだったが、一つだけ楽しみがあった。
それは、太宰府天満宮名物「梅ヶ枝餅」を食べることだった。
祖父は、
「この餅を食べると勉強ができるようになる。」
と言い、たらふく・・・と言っても2個だか3個だが、食べさせてくれた。
僕が、「うまかばい!」というと、
うむ!と頷いて、「梅ヶ枝餅は日本で一番うまい餅だ」と言った。
日本一・・・
当時の僕は宇宙の図鑑を持ち歩いていた。
幼少期は割とお勉強が好きだったのか、 恐竜図鑑 ⇒ 昆虫図鑑 ⇒ 宇宙図鑑 と持っている図鑑が移り変わった。
宇宙の図鑑を持ち歩く少年は、何事も宇宙単位で考える。
日本一うまい餅。
では宇宙一うまい餅は何なのだろう?
思った通りに、祖父に尋ねると
「宇宙に餅はない。強いて言うならこの餅が宇宙一だ」
と言ったような気がする。
美化したエピソードとしてこの話を終わらせたいので、そういうことにしておいていただきたい。
と、まぁこんな具合でこの世で一番美味しい餅は、梅が枝餅と思っていたわけです。
それから15年位経ち、20代なっていた僕は、カヌーイスト作家の野田知佑の川原での野営スタイルに憧れ、関東のあちこちに行った。原付バイクでね。

21~22歳の時の写真。 原付で関東各地を旅した
川原にテントを張り、釣りをして、焚火をし、本を読む。
まだ行ったことはなかったが、高知の四万十川のような、ジンのように澄んだ川で川原が広い理想的な野営場所が関東にないだろうか。
そんな時に目を付けたのが飯能の名栗川だった。
目的地に近づいてくると、「四里餅」と書かれた看板を何度か目にした。
そしてついには大きな看板を掲げた店の前に差し掛かったものだから、そこまで言うなら食ってやるよ。という気になり店に入った。
四里餅の第一印象は、
「[四里]と刻印されただけの、のぺっとした餅━━━」
というもので、この後一口頬張って感動を覚えるなど到底思えなかった。
しかも、当時は20代の血気盛んな若者だったので、店員の年の功は60代くらいのおば様に
「あんこは、こしあんにしますか?つぶあんにしますか?」
と聞かれ、日本男児なら粒あん一択だろうが!と少々ムスッとして、
「つぶあん!」
と答えた。
で、今はどうかわからないが、その時は餅と一緒にお茶を出してくれた。
季節は5月だったが夏が来たかと思わせるほどの暑さだったので、冷たい茶がたいそう美味しかった。
そして、餅をガブリと一口頬張って、そこに宇宙を見た。
う、うまい・・・
なんだこの餅は。。。
昔一度食べたことがあるような餅だ・・・
そうだ! 梅ヶ枝餅!
じいちゃんと一緒に食べた梅ヶ枝餅だこれは!!!
だが、梅が枝餅のように焼いていない。
生の餅だ。これはひょっとしたら、この餅を焼けば梅ヶ枝餅になるかもしれん。
その夜、野営地にてテイクアウトした餅を焚火で炙って食べてみた。
・・・うん、梅ヶ枝餅だ。紛れもなく梅ヶ枝餅だが、、、
生の方が断然美味い!
つまり、梅ヶ枝餅より四里餅が美味い!!
焚火の火が消え、そろそろ寝るかと横になった。
星空を見たいから、テントは張ってもテントの中では寝ないのだ。
キラキラと輝く星。
祖父と食べた梅ヶ枝餅のことを思い出していた。
宇宙一うまい餅は何なのだろう?
じいちゃん、あったよ。
宇宙一うまい餅はね、「四里餅」っていうんだよ━━━
━━━それからさらに十数年後。
『マンマ!明日秩父の方行くけど、お土産に四里餅買ってこよっか?』
『四里餅食べたい!!絶対忘れないでよ? すぐ調子いいこと言って忘れるからなぁ~』
『忘れないって!だからお金ちょうだい!』
『パッパ!僕にもお土産買ってきてよーー』
『はいはいーー』
じいちゃん。
梅が枝餅は日本一美味い餅だけど、
四里餅はやっぱり宇宙一だね!
じいちゃんのひ孫がもうちょっと大きくなったら、梅ヶ枝餅を一緒に食べた話をしようと思ってる━━━
-終 -
■追記
四里餅は生ものでネット販売等していませんので現地で食べるしかありません。
最近は売り切れることも多いようです
今日は @karilabCo さんところ遊びに秩父へ。
— OGAWA@狩猟&養蜂シェアリング (@TaketoOgawa) April 3, 2021
道中お目当てにしていた、
・四里餅
・珍達そば
・高砂ホルモン
が全て売り切れ。
もういいやとヤケクソになり入った寂れた(失礼!)餃子屋が孤独のグルメででたとこで最後に勝利した感じだった。
秩父の餃子菜苑、オススメです。
色んな意味で。 pic.twitter.com/foZUvP0JIm

にほんブログ村
- 関連記事
-
- 宇宙一、美味い餅の話をさせてほしい (2021/04/25)
- 終戦記念日に食べた「たい焼き」 (2017/08/16)
スポンサードリンク